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街路の小話-09

街路の小話-09_d0000095_1253105.jpg09. 「人と車と。」

みなさんの移動手段は何が多いですか?
近所でちょこっと用事を済ますとき、おでかけするとき、旅にでるとき、学校へ行くとき、それぞれの目的によって距離も時間も違います。自分の足でひたすら歩いたり走ったり、自転車に乗る、車に乗る、バスに乗る、電車に乗る、飛行機に乗る、船に乗る。。。などなどたくさん。

街路ではどんな移動手段・交通手段を目にしますか?徒歩、自転車、バイク、自動車、バス、トラム(路面電車のことです。)など。歩道と車道で分けてみると、歩道では歩行者と自転車、車道ではバイクや乗用車やバスやトラムというように分かれつつ、それぞれのスピードで空間を移動しています。しかし、そこはひとつのでっかい空間。スピードも大きさも強さも体もスケールも多くの違いをもつもの同士が一緒の空間を共有する、そして違うものが一緒にいられること、それにはそれなりの仲良くする方法が必要になってきます。

人と車の共存方法を探り、今日へとつながる最初のきっかけとなったのが、道路建築の技術者であり、建築家でもあったコリン・ブキャナン氏とそのチームによって1963年に英国にて発表された「ブキャナン・レポート」と呼ばれるものです。
レポートによると、車と歩行者を分離する“環境エリア(environmental areas)”や “都市の部屋(urban rooms)”といった特別な区域を設定し、空間の質を環境的に向上させ、デザインするという提案がされています。
また、『市街地は細胞から構成されており、街路は血液の循環する系とされています。そして、“4段階に区分された分散路の体系(幹線分散路・地区分散路・局地分散路・居住環境地区)”が発表されました。これは、幹線分散路や地区分散路によって居住環境地域の境界をはっきりと成立させ、「都市の部屋」としてまとめるために、歩行空間の導入と整備を提案したものです。(「建築・土木のことがわかる辞典 ACEネットワーク」より抜粋)」』と述べられています。
市街地を都市の細胞、街路を都市の血管・血液と見立てての考え方はイメージしやすいですし、興味深い考え方ですよね。建築も人の体に置き換えて考えられますし、街路も同じと言えるでしょう。

このブキャナン氏のコンセプトを受け、1960年代後半にオランダで歩行者と自動車が一つの道を共有するという歩車共存の考え方が生まれました。
「ボンエルフ」は歩行者や自転車が優先の考え方で、道の形状や幅員などで車はスピードや通過車両を抑制されます。歩道と車道は単断面の道路にあって、植樹やベンチや小さな庭を設け、道の空間全体に庭のような印象を持たせます。「ボンエルフ」とは「生活の庭」という意味です。
(参考:まちづくり関連用語集 No.71 ボンエルフ→こちら。

街路の小話-09_d0000095_1253238.jpgその後、各国でこの歩車共存道路の考え方は広まり、日本では歩行者を優先させて安全性・利便性を確保、住宅街・商店街につくられる「コミュニティ道路」が作られていくようになります。
(参考:コミュニティ道路とは→こちら。)

さて、現在の日本ではどのように人と車などとのお付き合いの仕方を考えているでしょう?興味ありますよね。ちょっと調べてみた所、国土交通省・道路局では『これからは「自動車で移動するみち」から「歩いて楽しめるみち」への転換が必要です。』と歩行者と自転車の利用を中心とした「くらしのみちゾーンの形成」に取り組んでいます。

ご興味持った方は詳しくはHPをチェックしてみて下さい。

*国土交通省・道路局→こちら
*歩行者・自転車のための道路行政(くらしのみちゾーンの形成)→こちら
*道づくりまちづくり→こちら

歩行者側からみれば、ある時は便利でも、ある時は怖い存在だったり、お邪魔な存在だったりしちゃう車も人同様、街路を彩ったり、街路の個性を作り出す一要素でもあるわけです。程よく仲良くやっていける提案とそれを実行することができれば、きっとその街路空間はもっと豊かなものとなるはずです。

さて、移動・交通手段によってかかる時間も違えば、目にする景色、聞こえる音、感じることが異なるのは当然。いつも歩き慣れた道でも、車で通り慣れた道でも、普段と違う手段、(例えばめちゃくちゃ近いのに車とか、急いでないのに激走するとか?)でその空間を移動してみるなんて実験をするのも、街路を楽しむ一つの方法で新しい発見があるかもしれませんね。

(2006.09.10 SUN)

by ed3_street | 2007-08-26 22:42 | - 街路の小話。  

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